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電通総研コンパス vol.17

偽・誤情報が広がる日本の情報空間

情報の信頼性を保つための「情報インテグリティ」が世界的に重視されています。4月2日の「国際ファクトチェックデー」に合わせて日本ファクトチェックセンターと電通総研が実施した「情報インテグリティ調査2026」の結果を基に、偽情報や誤情報が広がる日本の情報空間の現状と課題を整理しながら、誰もが安心して利用できる情報空間づくりへの道筋を探ります。

「電通総研コンパスvol.17情報インテグリティ調査2026」レポート

1. 「情報インテグリティ」に注目が集まる背景

私たちはスマートフォンなどのデジタル端末を通じて、情報空間と接続されています。その情報空間は今、大きな危機に直面しています。生成AIの急速な進化やフェイクニュースの拡散、ディープフェイクと呼ばれる精巧な偽造動画の登場などにより、「何が真実か」を見極めることが困難な時代へと突入しています。

このような状況下で、近年重視されている概念が「情報インテグリティ」です。「情報インテグリティ」は、情報の「正確性、一貫性、信頼性」を指します(国連“Information Integrity on Digital Platforms” p.5、2023年)。人びとが誤った情報に惑わされることなく、正確な情報に基づいて判断できる環境をどう守っていくかという、現代社会における最重要テーマの一つになっています。

日本ファクトチェックセンターと電通総研では、2026年1~2月に全国15~69歳の5,000人を対象に「情報インテグリティ調査2026」を実施しました。本記事では、その結果から見えた日本の情報空間の「現在地」を紹介するとともに、「誰もが安心して利用できる情報空間づくり」に向けて、社会全体で取り組むべき方向性と私たち一人一人にできることを探ります。

「利用しているサービスや会話で、偽・誤情報をどれくらいの頻度で見聞き」するかを尋ねたところ、SNS・動画共有サービスでは約4人に1人(24.5%)が「毎日」見聞きしていると答えました(図1)。

偽・誤情報はもはや遠い世界の話ではなく、日常にまん延している、誰にとってもひとごとではない脅威になっている様子がうかがえます。

「AIが作成したニュース記事を、特に意識せずに読んでいると思う」かについて尋ねた質問では、約4割が「そう思う(「そう思う(10.0%)」「ややそう思う(32.5%)」の計)」と答えました(図2)。

生成AIと人間のいずれが作成したニュース記事なのか、その境界線が見えないまま、無意識に生活の中に取り込んでしまっている人が一定数いることがわかります。

    また、「生成AIを利用して作成された情報に自動でAIサービスのクレジットがつく機能があればよいと思いますか」という質問には、約6割が「そう思う(「そう思う(32.2%)」「ややそう思う(27.2%)」の計)」と答えました(図3)。

    生成AIは現在進行形で急速な進化をしており、人間が書いた文章と見分けがつかないほどの自然なテキストや、実在する人物を精巧に模した画像や映像を生成できるようになっています。それらが生活に浸透する中で、情報源の明示という機能的なサポートを求めているといえそうです。

    情報インテグリティに関連するさまざまな用語や概念について、人びとがどの程度認知または理解しているのか尋ねたところ、結果に大きなばらつきが見られました(図4)。

    「フェイクニュース」という用語の理解度は約7割(「人に説明できる程度に詳しく知っている(25.2%)」「人に説明はできないが、概念を理解している(41.0%)」の計)、さらに「名前を聞いたことがある(24.3%)」まで含めると9割となり、広く一般に浸透していることがわかりました。理解度が半数を超えていたのは、「フェイクニュース」と「偽・誤情報(50.1%)」のみです。

    その一方で、デジタル情報空間の特徴や構造に関わる用語が必ずしも十分に理解されていない現状も浮かび上がりました。自分と似た興味・関心をもつユーザーが集まる閉鎖的なデジタル空間で、自分と似た意見が集まってくるようになる状態を指す「エコーチェンバー」現象の理解度は8.6%(「人に説明できる程度に詳しく知っている(3.5%)」「人に説明はできないが、概念を理解している(5.1%)」の計)にとどまりました。

    ニュースや情報に対して、客観的な証拠に基づいて真偽を検証する「ファクトチェック」をおこなったことがあるか尋ねたところ、「おこなったことはない」と回答した人が7割に達しました(図5)。

    しかし、この結果から単純に、人びとのリテラシーや努力が不足していると言い切ることはできません。

    膨大な情報があふれる現代において、情報の真偽を逐一確かめることは時間的にも技術的にも個人の限界を超えています。社会全体で、偽・誤情報への対応を考えなければならない段階に差し掛かっているといえそうです。

    個人の対応に限界が見える中、人びとは情報空間の整備をどの主体に求めているのでしょうか。

    「民間企業によるネットサービスだけでなく、政府・自治体や市民団体による公共性の高いネットサービスも必要だと思う」かについて尋ねた質問には、約6割が「そう思う(「そう思う(17.7%)」「ややそう思う(40.0%)」の計)」と答えています(図6)。

    また、「デジタル空間において、安心して情報を利用できる環境づくりを担うべきなのは、主にどの主体」かについて尋ねた質問では、回答が分散しました(図7)。

    具体的な主体についての複数回答では、多い順に「政府・自治体などの公的機関(33.5%)」「マスメディア(30.4%)」「デジタル・プラットフォーマー(28.1%)」「情報を発信・受信する個人(22.9%)」「メディア関連の団体(22.8%)」となり、多様な主体が挙げられました。その一方で「わからない・あてはまるものはない」が35.7%で最多だったこと(本項目は他の具体的な主体についての項目を選んでいない場合のみ回答できる)も注目されます。

    これらの結果は、安心して情報を利用できる空間づくりについての社会的合意が形成されていない現状を表しており、また、単独の主体では実現できない、という人びとの意識が反映されているとも考えられます。

    7. <まとめと考察> 私たち一人一人が今できること

    今回の調査結果から見えてきたのは、SNSなどを通じて偽・誤情報が私たちの日常に存在していること、生成AIの進化によって情報の真偽を見極めることが難しくなっているという現状です。

    一方で、ファクトチェックの経験者は少数派にとどまり、個人の努力だけでは対応しきれない場面が増えています。誰もが安心して利用できる情報空間づくりに向けて、社会全体で「情報インテグリティ」について議論を深めることが期待されます。

    本記事の公開日である4月2日は、「国際ファクトチェックデー」です。この日を機に、ご家庭や学校、職場などの身近な場所で「情報との向き合い方」について、話し合ってみてはいかがでしょうか。まずは、身近に偽・誤情報がまん延していること、そして気づかないまま偽・誤情報を摂取している可能性があるという現在の状況を、私たち一人一人が正しく認識することが、安心・安全な情報空間づくりに向けた第一歩になるはずです。

    最後に、筆者自身も本記事の一部で生成AIを活用しました。生成AIの進化のリアリティを目の当たりにし、生成AIと人間との境目がますます曖昧になっていることを実感するとともに、情報の真偽を見極めることがいかに困難であるかを痛感しています。

    調査概要

    調査時期 2026年1月30日~2月1日
    サンプル数 5,000
    対象者 全国15~69歳の男女
    調査主体
    電通総研・日本ファクトチェックセンター
    監修
    山口真一 教授(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)
    調査会社
    電通マクロミルインサイト
    調査方法
    インターネット調査
    • ※グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。
    • ※本調査(5,000サンプル)の標本サイズの誤差幅は、信頼区間95%とし、誤差値が最大となる50%の回答スコアで計算すると±1.4%となります。
    • ※質問文に記載した「MA」は複数回答、「SA」は単一回答を指しています。

      Text by Ryo Saito
      Illustration by visuals on Unsplash

      お問い合わせ先

      本調査に関するお問い合わせ先
      qsociety@dentsusoken.com
      担当:鷲見、齋藤、中川、山﨑
      g-pr@group.dentsusoken.com
      コーポレートコミュニケーション部