人・社会・テクノロジーの未来を変える、はじまりの場

ニューノーマルの価値観を考え、形にする。イノラボがつくるWithコロナ時代のイノベーション

Withコロナ時代の新たな社会課題に対して、先端技術を活用した価値提供を考えようと立ち上がった、6つのプロジェクト。生きていく上で必要不可欠な「食」「学ぶ」「働く」、人生に豊かさを与える「観光」「店舗」「情報」という6つのテーマごとに、イノラボの全てメンバーがチームを組み、約3カ月間のプロジェクトを進めてきました。

問題提起を投げかけた、プロジェクト発起人の森田浩史に、立ち上げの背景や思いを聞きました。

先端技術を活用して見たことのない未来を提示する。イノラボの真価が問われたコロナとの向き合い

コロナ禍での、イノラボ全メンバーを巻き込んだプロジェクト企画。立ち上げを決めた思いを教えてください。

森田

コロナ禍でイノラボにできることは何か。考え始めたのは、緊急事態宣言が発令された直後の、4月第二週でした。イノラボでもコロナの影響は大きく、本格稼働が決まっていた製造業のAI導入プロジェクトが無期限延期となるなど、次々と「延期」「中止」に…。イノラボを含め、会社全体がは4月からは原則在宅勤務となり、「コロナが収まるまでじっとしていよう」という雰囲気が漂っていました。

ただ僕は、そこになんとも言えない違和感を抱いていました。イノラボが、ただコロナの動向を見守っているのは違うのではないか。イノラボだから取り組むべきことがあるのではないかというのが、プロジェクト発案の思いでした。

具体的なきっかけはあったのでしょうか。

森田

何よりも勇気付けられたのは、3月に世界的に注目された台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タン氏による政策でした。彼は、マスクを国民に均一に行き渡らせるために、政府の在庫データの一般公開と地図上でマスク在庫を見られるシステム開発を牽引し、IT活用によるコロナ対策の成功例として称賛が寄せられていました。自宅でそのインターネット記事を読んでいたとき、ただニュースの受け手の側に廻っている自分に気づいたのです。

イノラボは、「社会課題の解決に向けて、生活者の行動をデザインし、先端技術を活用した仕組みを実装する」ためのラボです。「先端技術を活用すれば、こんな未来がやってくる!」と、誰も見たことのなかった社会のあり方を提示することに、存在意義があります。

コロナ禍で先が読めないからこそ、妄想を膨らませ、積極的にプロジェクトを発案し、これから確実にやってくる、Withコロナ/アフターコロナ社会での暮らし方を考える。テクノロジー活用の実証事例を示していくことこそ、イノラボがやるべきことだと動き出しました。

コロナ禍で気づいた「不要不急」の価値に向き合いたい

全メンバー参画型のプロジェクトとして6つのテーマを選定するにあたり、こだわった点は何ですか。

森田

生きる上で欠かせない「食事」「教育」「仕事」に加えて、人生に豊かさを与える「観光」「店舗」「情報」のテーマも入れたことです。

これから続く「Withコロナ」、あるいはコロナとの戦いが収束した「アフターコロナ」には、ニューノーマルの生活は続いていきます。コロナがあるから「不要不急」なものはすべて我慢…という社会は成り立たないでしょう。コロナとの共存で人々の意識が変化する中、生活を豊かにするために、テクノロジーを活用したどんな取り組みが考えられるのか。「不要不急」でないものも、イノラボが手がけるべきテーマだと思いました。

プロジェクトを進める上で、イノラボだから挑戦できること、強みはどこにあると考えていますか。

森田

「コロナ後のニューノーマル」といっても、どこにも正解がないわけですから、各テーマでどのように仮説を立て、どのように実証実験を行うのかは、これまでとは別次元の生みの苦しみがありました。
特に難しかったのは、プロジェクト進行と同時に、コロナ禍の状況も刻々と変化していく点でした。

それでも、イノラボは、消費者インサイトや、デザイン思考に強みを持っていますし、自社製品のしがらみもありません。「最適なテクノロジーを使う」ことが簡単にできるのです。例えば、社内での三密センシングは、社員が“監視されている”と思うことのないように、店舗で活用されているカメラとは違う、他のセンシング方法を模索できます。あくまでも利用者目線に立ったアイデアを生み出せるのは、イノラボの大きな強みでしょう。

社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)が求められる中、テクノロジーの社会実装にはユーザーエクスペリエンスが重要になります。何気なく使っているサービスの裏に、ブロックチェーン技術やAIが搭載されている。見えないところで生活の利便性を高める。そんなセンスメイキングするDXに、ニューノーマルのニーズがあると考えています。

イノラボが手がける6テーマのプロジェクト内容とは

では、具体的に6つのプロジェクトはどう立ち上がり、どんな社会の実現を目指しているのか。それぞれの詳細と現状を紹介していきたいと思います。

【テーマ①食】

「金融機関と連携した飲食店のDX―アフターコロナのニューノーマル対応―」

コロナ禍による消費者行動の変化に伴い、多くの飲食店が苦境に立たされています。その中で、大手チェーン店を中心に飲食店のDXによるオンライン予約やモバイルオーダー、キャッシュレス、デリバリーサービスへの対応などで、消費者の新しいライフスタイルに則したビジネスモデルを確立しようとする動きが見られます。

一方で、金融機関や地方自治体では、地域の飲食店や商店街の店舗に対して、コロナ禍における融資や支援策を進めており、消費者の地元支援の意識も高まっています。本プロジェクトは、社内の金融事業部との協業により、飲食店におけるDXのための知識、手段をセットで提供するモデルの調査と仕組みの整備を行っています。

  • 何がニューノーマルになるか
    消費者行動に合わせた飲食店のDX。これまでDXに後ろ向きだった中小飲食店も事業存続のために、一定のDXを受け入れるようになる。
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    地域の金融機関や自治体から、DXのための知識や手段などが飲食店や消費者に提供され、飲食店と消費者のつながりが深まるとともに、飲食店における消費行動が促進されるサービス。
  • なぜISIDがやるのか
    金融事業部との協業により、イノラボの企画、UI/UX、技術をISIDの顧客にビジネス展開できるから。

【テーマ②教育】

「リモートプログラミング教室」

アフターコロナでも付加価値のある「リモートプログラミング教室」にて、求められる技術開発とその有効性検証を行っています。

これまでテレカンツールで行われていたプログラミング教室では画面上の制約が多く、生徒や先生が対面よりもストレスを感じるという課題がありました。そこで本プロジェクトでは、

  • 常時ひとりひとりの「作業状況」を共有することで、双方向のコミュニケーション活性化につなげる
  • お互いの「操作情報」を共有することで、隔てられていた画面外の情報を活用するという点でより使いやすくなるように考え、このコンセプトに従ってInput/Outputを拡充する機能を持つプロトタイプを開発し、その有効性を検証しています。
  • 何がニューノーマルになるか
    リモート体験の一般化、リモートの壁を感じさせないテレカンツール。
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    上記のコンセプトに従ってInput/Outputを拡充する機能を持つツール(ブラウザまたはテレカンツールのアドオンを想定)の開発により、教育分野における新サービスを提供。
  • なぜISIDがやるのか
    プログラミングを熟知している、かつシステム構築ができるため。

【テーマ③仕事】

プロジェクト#01「オフィス入館時の検温・入館シール発行」

新型コロナウイルス感染拡大防止策として、体温計測やマスク着用が一般に浸透しています。一方で、企業において、経営側は従業員の安全確保が求められますが、感染防止のための行動は個人に委ねられているのが現状です。実際に電通グループでは、従業員の健康管理は体温計測および報告を実施しているものの、来訪者に対するチェックは実施できていません。

本プロジェクトでは、オフィス来訪者を対象に検温・マスク着用チェックを行い、問題がなければ入館シールを発行するシステムの開発を進めています。検温カメラとラベルプリンターを連携し、本人確認・検温・消毒を一度に済ませるよう、9月下旬〜10月上旬から社内で試験導入を予定しています。

  • 何がニューノーマルになるか
    マスク着用や検温をしていないと入館できない、入館時の検温、体温データの保存が一般的になる。
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    入館時の検温・マスク着用チェックシステム、チケッティングと連携し、本人確認・検温・消毒を一度に済ませるなどの展開。
  • なぜISIDがやるのか
    電通グループでの実空間イベント案件に活用できるため。

プロジェクト#02「オフィスのリアルタイム三密センシング」

社員が出社する際の三密管理は現状部署毎に管理していますが、フロア毎・リアルタイムの三密状況の見える化は実現していません。そこで、三密回避のためのオフィスフロアでセンシング技術活用を進めると同時に、タイムリーな社員へのフィードバックを検討しています。

まずは、ISIDの品川オフィス5階入り口にセンサーを設置。エレベータ手前での入退出カウントを行い、オフィスにいる人数を入退出数で推計する技術検証を行います。次に、全館の入場・退場・滞在人数、フロア毎の入場・退場・滞在人数、時間変化(履歴)に加えて、意思決定支援&行動変容にむけて、リアルタイム混雑状況の可視化や時系列分析を行い、将来のオフィス密度を予測します。

  • 何がニューノーマルになるか
    会社として、社員の健康を守る観点から、オフィスでの三密回避の取り組みを積極的に推進する。
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    オフィスでの三密状況をセンシングし、タイムリーに社員にフィードバックする仕組み。
  • なぜISIDがやるのか
    センシング技術に関する知見を持っており、スマートオフィスソリューションの付加価値を高められるため。

プロジェクト#03「オンラインミーティングの効率化・高度化に向けた手法・ツールの検討」

新型コロナウイルスの影響により仕事やセミナー、レッスンといった様々なイベントが、リアルからオンラインへと移行しています。一方でオンラインミーティングの場合、リアルな場でのブレストのようなインタラクティブに意見を出し合い、その場で共有し、ビジュアル化する、といった行為がしにくく、腹落ち感のある結果になり難い側面があります。

本プロジェクトではそのマイナス面に着目し、オンラインミーティング時のコミュニケーションや共感度を、よりエンハンスさせるための手法を検討し、現在、オンラインミーティングツールmiroの調査や、オンラインミーティングの進め方と各種TIPSを報告レポートにまとめています。

  • 何がニューノーマルになるか
    リモートワークとオンラインミーティングの一般化。
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    多人数参加型の遠隔クリエイティブにマッチする、オンラインミーティングツール、遠隔を前提としたクリエイティブに関する新しいメソッド。
  • なぜISIDがやるのか
    プロジェクトによって見えたメソッドをイノラボやUXチームの今後のスタンダードになることを目指し、業務遂行における差別化やブランディングにつなげるため。

プロジェクト#04「リモートワークでの従業員エンゲージメント」

コロナ禍では、リモートワークの浸透により打ち合わせが目的志向になり、組織の求心力や所属意識の低下が懸念されています。今後、従業員エンゲージメント施策へのニーズはますます高まるでしょう。

そこで本プロジェクトでは、従業員エンゲージメントの動向調査や計測サービス調査、エンゲージメント向上コンテンツの検証を行い、コロナ禍での従業員エンゲージメント向上を通じた組織力向上サービスを検討しています。

従業員エンゲージメントツールは、POSITIVE(導入実績2,700社を超えるISIDの人事ソリューションサービス)との連携を深め、社内で活用しています。さらに、オンラインフィットネスの効果検証を学術的に進めており、今後の法人向けサービス化を目指しています。

  • 何がニューノーマルになるか
    従業員:個人での作業、自宅での運動意識
    会社:組織間のつながりを維持するための意図的な有意義なイベントを積極的に行う
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    従業員エンゲージメント計測サービスのさらなる流行、従来の福利厚生に変わる従業員エンゲージメントを高めるコンテンツ。
  • なぜISIDがやるのか
    POSITIVEという人事パッケージを持ち、大手クライアントに遠隔フィットネスを提供している実績があるため。

【テーマ④店舗】

「店舗内三密回避&対策システムの研究開発」

コロナ禍では、店舗内の「衛生面」「安心面」への関心が高まっています。本プロジェクトでは、店舗の「混雑具合」「換気状況」をカメラやセンサーで計測、モニタリングすることで、リアルタイムな状況データの公開、混雑予測を提供する仕組みを検討しています。

具体的に行うのは、店舗空間の評価です。

①空間における密集、密接(混雑状況)の評価
店内の混雑状況をライブカメラでモニタリングし、単位時間あたりの「人数」「密度」から混雑具合を時間軸にそって算出します。また、ライブカメラでとらえたリアルタイムの店舗の状況を、プライバシーに配慮した画像に変換し配信します。
➁空間における密閉(換気状況)の評価
空気のセンシングを行い、換気レベルを評価。店舗のウェブサイトや、外部の店舗紹介サイトなどへの提供を通じて、換気状況を幅広いお客様へアピールすることが可能になります。
同時に、店内従業員へ換気のタイミングの通知が可能となり、店内環境を良好に保つことができます。

2020年9月には店舗での実証実験を実施、検証結果を踏まえて、今後のサービス化に向けた検討を進めていきます。

  • 何がニューノーマルになるか
    空間の開放性、通気の良さ、座席配置などの配慮された評価の高い店舗が望まれる。店舗の混雑度、「空気回転率」(空気の入れ替え回数/時間)あるいは「単位換気時間」(何分で全部の空気が外気と入れ替わるか)はモニターされるのが当たり前に。代替指標としてのCO2濃度などの計測も重要な指標になる。
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    評価指標の基準が設けられ、店舗施設・商品を自動モニターし評価する仕組みを導入。リアルタイムに情報が公開され、様々な情報機関に提供される。情報期間は自社のサービスにその情報を反映させユーザーに提供していく。
    また、入館、入室するユーザーにも、入店時にサーモセンサーによる制限などが入る可能性も。業種によっては、プライバシー準拠の新型コロナウイルス追跡システムなどの利用が求められ、グリーン評価者(過去2週間危険範囲に接触なしなど)以外の入室を禁止、もしくは優先ライン、専用ラインなどを設けることが可能になる。
  • なぜISIDがやるのか
    ライブ配信のノウハウがあり、他プロジェクトで実施している人物マスクのノウハウ、ISID SIMが使えるため。

【テーマ⑤観光】

「日常型観光を促進するワーケーション体験の実証」

旅行者として名所を巡り楽しむコンテンツ型から、生活者に近い立場で地域を体験し、人々と交流する日常型へ。コロナは、「観光」のあり方に大きな変化をもたらしています。バケーションとワークを組み合わせた「ワーケーション制度」など、企業の働き方改革にも注目が集まっています。

そこで本プロジェクトでは、観光を始点として、地域への滞在期間や接触機会を増やし、地域と企業の双方にメリットをもたらすモデルを模索します。これからの社会では、休暇と仕事をバランスした新たな勤務スタイルにより、旅先でのスタイルが変化するでしょう。観光地で平日を過ごす機会が増え、旅行者というより、生活者の目線で地域と接する機会が増えることが期待されます。

現在はモデルとなる観光地や、地域の側で受け入れに協力いただける企業や団体などを選定しており、社内のほか、賛同いただける企業からもモニターを募り検証していきます。

  • 何がニューノーマルになるか
    ワーケーションにより、旅先でのスタイルが変化。観光地で平日を過ごす機会が増え、旅行者というより、生活者の目線で地域と接する機会が増える。
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    観光地の日常的な魅力やポテンシャルを伝えつつ、地域の人や企業とマッチングするサービス。その場での取り組みの可視化や、貢献活動の評価、フィードバックをしていく仕組み。
  • なぜISIDがやるのか
    ワーケーションと未来のHCMソリューションへのニーズの可能性や、地域スコアなどの観光地からのフィードバックをもらえるつながりがあるため。

【テーマ⑥情報】

「「New Normal Communication」に関する研究開発〜自然発生的な会話を生み出す音声SNSプラットフォーム検証〜」

「巣ごもり」を意識した生活様式が、ニューノーマルとして定着しつつあります。しかし、社会の原動力は出会いにあり、変化にあります。これから人脈を作っていく若い世代はとくに、新しい関係性の構築が、長い社会人生活での大きな価値を生み出します。

コロナ禍でも社会の循環が止まらないように、本プロジェクトでは、雑談の重要性と、近年盛り上がりを見せている音声コンテンツに着目し、音声SNSで気軽な“雑談の場”を実現できないか検討しています。

創造の源となる“雑談の場”をリモートで作るために、

  • 立場を感じさせることがない、発話時の音声変換技術
  • 「新しい気づきや出会いを得る」ためのルーム推薦技術(ユーザーの満足度を保ちつつ、新しいテーマやメンバーのルームを推薦する)のプロトタイプ開発を進めてきました。2020年9月にはISID新入社員への実証実験を行い、今後のサービス化を目指していきます。
  • 何がニューノーマルになるか
    新しい出会いが生まれる機会、大人数が気軽に参加できる“雑談の場”が減っていく。
  • どんな新しいサービス・モノ・事業が生まれるか
    新しい出会いやインフォーマルな会話を生むサービス。
  • なぜISIDがやるのか
    イノラボで開発した画像系技術は、多くのプロジェクトで活用されビジネス化が検討されており、同様に音声系技術も今後、電通グループ全体への展開が可能になるため。