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クオリティ・オブ・ソサエティ2026

思考様式の現在地点

ATTITUDE SURVEY

社会の変化が加速する現代において、人びとはどのような思考様式で物事に向き合っているのでしょうか。2025年に実施した意識調査では、目的に基づいて計画的に物事を進める「エンジニアリング的思考」と、目の前の現実を受け止めて制約の中で創造的に対応する「ブリコラージュ的思考」の特徴を示して、物事に取り組む際の「構想」「着手」「展開」「達成」という四つの段階ごとに、考えや行動がどちらの思考様式に近いかを尋ねました。

結果の概要

【A】はエンジニアリング的思考とされる考えや行動の特徴を、【B】はブリコラージュ的思考とされる考えや行動の特徴を指します。下図は四つの質問への回答結果です。

下図からは、「構想」から「達成」にいたる段階の過程でエンジニアリング的思考の傾向が徐々に強まっていく様子がうかがえます。「構想」段階ではエンジニアリング的思考は計21.5%であるのに対してブリコラージュ的思考は計44.4%と、ブリコラージュ的思考が優勢となっています。これが「達成」段階になるとエンジニアリング的思考は計44.1%、ブリコラージュ的思考は計24.4%となり、エンジニアリング的思考が優勢となります。

これらの結果からは、人びとの思考様式は必ずしも一方に偏ることなく、物事が進行する段階に応じて適した思考が選択されたり掛け合わされたりしている様子がうかがえます。

年代ごとの特徴

年代ごとの回答を見てみると、「構想」から「達成」への段階を経るにつれて、いずれの年代もエンジニアリング的思考の傾向が強まっています。また、図中の点線と矢印で示した差を見ると、「着手」以前と「展開」以後では年代間の差に開きがある様子がうかがえます。中でも特徴的な結果を示したのは18~29歳の若い世代です。「構想」と「着手」の段階ではブリコラージュ的思考は全年代でもっとも少なかったものの、段階の経過に伴う回答の減少幅は他の世代より小さく、「達成」の段階では全年代の平均と近い結果になりました。

思考様式によって異なる社会生活における価値観

本調査では対人関係や新たな挑戦への捉え方といった社会生活における人びとの価値観についても尋ねています。思考様式に関する四つの質問のうちアウトカムを示す「達成」段階に着目して、「計画通りに進んだほうが、達成感を感じる」エンジニアリング的思考と、「不測の事態を乗り切ったほうが、達成感を感じる」ブリコラージュ的思考との間で社会生活における価値観にどのような違いがあるのかを見ていきます。

「調和」をより重視するエンジニアリング的思考

「周りと調和すること」と「独自の発想や自分らしさ」のどちらを優先するかを尋ねた質問と、「達成」段階における思考様式を尋ねる質問とをクロス集計しました。その結果、エンジニアリング的思考は計51.0%が「周りと調和すること」と回答しており、「独自の発想や自分らしさ」を30ポイント近く上回っています。なお、ブリコラージュ的思考も「周りと調和すること」が「独自の発想や自分らしさ」を上回っており、思考様式にかかわらず全体的に調和を重視する傾向にあるものの、エンジニアリング的思考はより調和を重視する傾向が見られました。

「挑戦」に前向きなブリコラージュ的思考

失敗する可能性がある場合に「挑戦したくない」か「挑戦したい」かのいずれにあてはまるかを尋ねた質問と、「達成」段階における思考様式を尋ねる質問とをクロス集計しました。その結果、エンジニアリング的思考は計50.2%が「挑戦したくない」と回答しており、「挑戦したい」を30ポイント近く上回りました。他方、ブリコラージュ的思考は計36.7%が「挑戦したい」と回答しており、「挑戦したくない」を6ポイント程度上回る結果となっています。不測の事態を乗り切った達成感が新たな挑戦を後押ししている様子がうかがえます。

計画と偶発の共鳴が生み出す社会の活力

本調査を通じて、人びとの思考様式はエンジニアリング的思考とブリコラージュ的思考のどちらか一方に偏ることなく、その場の段階に応じた使い分けがされていることがうかがえました。加えて、年代によって思考様式に違った傾向が見られることや、思考様式によって社会生活における価値観にも違いがあることが見受けられました。

私たちは変化が大きく先の見通しが立ちにくい社会に生きています。現代では価値観の多様化が進み、異なる背景や考え方をもつ人びとと共に生きることも当たり前になりつつあります。こうした環境の下、よりよい社会を実現するためには、さまざまな段階に即して、計画通りに物事を進める力と、予期せぬ出来事に柔軟に対応する力の両方が求められるでしょう。エンジニアリング的思考は調和を重視しながら目的に向かって着実に物事を進める力を、ブリコラージュ的思考は挑戦を歓迎しながら制約の中で創造的に対応する力を発揮するといえます。変化が大きく多様性に富んだ社会における活力の源泉は、両方の思考を包摂して計画と偶発を共鳴させながら、しなやかに未来の道を切り開いていくことにあるのではないでしょうか。

「クオリティ・オブ・ソサエティ指標2025」
・調査時期  : 2025年6月23日~6月30日
・調査対象者 : 日本全国18歳から79歳の個人
・抽出方法  : インターネット調査パネルから国勢調査結果に基づく都道府県・性・年代別割当
・調査方法  : インターネット調査
・有効回答数 : 12,000
・調査実施機関: 株式会社 電通マクロミルインサイト
  • 本レポートに掲載したグラフ内の各割合は、全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。そのため、各割合の単純合計数値や回答率の差を示す数値とは必ずしも一致しない場合があります。

Text by Ryo Saito
Photograph by Kvalifik on Unsplash